当院は2007年4月に開院し、大学病院で日本初のJCI(国際病院評価機構)認定取得(2015年2月)後、厚生労働省により2019年4月には地域がん診療連携拠点病院(高度)、さらに同年9月には「がんゲノム医療拠点病院」に指定されています。
2022年度より、それまでの「原発不明がん・希少がん科」と「消化器腫瘍科」がひとつとなり「腫瘍内科・消化器腫瘍科」として診療を行っています。
そのメインの職場となるのが、2022年7月に化学放射線治療棟として新設されたF棟(図1)です。F棟2階には42床から77床に増床となった通院治療センターが、4階にはがん化学療法患者や放射線治療患者を対象とした56床の入院病棟があります。当院には非常に多くのがん患者さんが受診されており、2020年の包括的がんセンターでのがん薬物療法の件数では全国5位(関東4位)です1)。
我々の臨床業務の主な内容は、消化管癌(食道・胃・小腸・大腸・肛門管から発生するがん)および胆道膵癌(胆道と膵臓から発生するがん)および原発不明がんに対するがん薬物療法です。
さらに当科ではがんゲノム医療や先進的な治療(治験や臨床試験など)にも積極的に取り組んでいます。
がんゲノム医療(がん遺伝子解析と、その結果に基づき治療を選択する個別化医療)は近年がん医療の中で最も注目される分野の一つで、その開発は急速に進んでいます。1990年より米国を中心に開始されたヒトゲノム計画では人の全ゲノム解読に10年の月日と約3500億円の費用を要しましたが、次世代シークエンサーの出現を契機に、現在では1-2日でかつ10万円程度の費用で可能となっています2)。
実臨床においてもがん遺伝子パネル検査が2019年より保険診療として可能となり、「がんゲノム医療拠点病院」である当院で週1回行われるエキスパートパネルは当科の重要な業務の一つです。
臨床試験では、SCRUM-Japan、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)、WJOG(西日本がん研究機構)、JACRRO(日本がん臨床試験推進機構)など全国規模の臨床試験グループに所属し、多くの臨床試験に参加しています。また治験では第I相から第Ⅲ相試験の治験を積極的に行っています。
基礎研究(トランスレーショナルリサーチ)については、がんゲノム医療センターなど院内他科と連携して腫瘍分野の研究を行っています。
このように、当科では多くの患者さんに最善/最新の治療を届けると共に、新たな治療の進歩に向けた取り組みも積極的に行っています。
<引用>
- 「手術数でわかるいい病院 2022」週刊朝日MOOK(朝日新聞社)
- NIH National Human Genome Research Institute